東洋医学では「臭いは火によって立ち上る」

東洋哲学、東洋医学では万物を五行に配当するということで、実際に様々な五行分類が様々な古典の各所に出てきます。そして、それらを集めたものを五行色体表(ごぎょうしきたいひょう)と呼んでいます。

五行色体表のもととなる古典は、歴史的には始皇帝の焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)を暗唱口伝によって乗り越えた後に書物化された文献群と、書物自体を壁の中に隠して乗り越えた文献群があり、それらの文献の内容が結構異なるという事態になりました。

それらの差の中には、五行の配当の違いすらあり、古くは五臓の配当ですら現在のような木=肝、火=心、土=脾、金=肺、水=腎ではなかったものもありました。

それらの話については長くなりますので、別の日にお話しするとして、今日の話は先日まで大阪で行われていたG20と関連した話題です。

今回のG20の主要議題の1つとして、近年注目されてきているマイクロプラスチックの問題が取り上げられました。しかし、今回の議題の中で規制対象として話し合われるマイクロプラスチック使用製品のリストから抜け落ちてしまっていたものがあったのです。

それが、柔軟剤、洗剤、制汗剤、消臭芳香剤などに含まれ、香りを長持ちさせるために添加されているマイクロカプセルです。
詳しくはこちらの「非営利法人日本消費者連盟」のサイトに書かれていますので興味がある方はご一読ください。

香りを長持ちさせるために、香りの成分をプラスチックが材料であるマイクロカプセルに封入して、そのカプセルが刺激で壊れることによって香りを放出するということで、いろいろな製品にすでに利用されています。

問題なのは、カプセルが壊れたあとも、プラスチックの成分が微粒子として存在するということ。そして、技術の進歩によりカプセルが小型化されてきており、現在は1μm(1mmの1000分の1)までできるようになっています。

ちなみに、花粉症の原因である花粉の大きさが約30μm、有害な微粒子の代名詞のように有名なPM2.5とは2.5μm以下の粒子のことです。比較するとマイクロカプセルは非常に小さく、通常の花粉用マスクでは通過してしまうような大きさです。そして、その有害性についてはあまりわかっていません。少なくともPM2.5の一種になりますので、健康に良いということはなさそうです。5μm以下の粒子は特に肺に入りやすく、肺の自律神経に悪い影響を与えるとされています。アレルギーなどの原因となっていて気が付かない場合もあるのではないかと思います。

柔軟剤の香りについては、好き嫌いの個人差があり、あまりにも強い臭いでは不快感を他の人に与えてしまうということで「香害」というような言葉も作られましたが、製品としては人気があり現在でも販売されています。

個人的には、気の感覚が開発されてくると、人工的な臭いが苦手になりますので、洗剤も柔軟剤も芳香剤も嫌いなのですが、臭いというのは個人差がありますので、使う使わないは自由だと思います。

しかし、そういった製品の危険性について知らないままで使い続けるというのは、良くないと思いますので今回の記事を書きました。

東洋医学では五行色体表の五役(ごえき)が色、臭、味、声、液とされており、五役とは五臓の役割とされています。木は肝であり、肝は目に開竅するとされているので色を見る働きがあるから「色」は納得できます。同様に、土は脾であり、脾は口に開竅し、脾は五味(酸苦甘辛鹹)(※鹹(かん)は塩辛い味)を吸収するので「味」。金は肺であり、肺で息をすることで声を出すので「声」。水は腎であり、腎は体内の液体の量を尿で調整するので「液」となります。

しかし、火は心であり、それが臭いと関係するというのが説明しにくいのです。ちなみに古典では表題のように「臭いは火で立ち上るから」とだけ書いてあって、心との関係は説明されていません。

東洋医学をある程度知っている人は、臭いを感じるのは鼻で、肺が鼻に開竅するので、心よりも肺に関係しそうなのにと思うかもしれません。

でも古典には、そういうことは書いていません。「臭いは火で立ち上る」とだけ書いてあります。ここからわかることは、この五役の「臭」は臭いをかぐことではなく、体臭を発散するという働きを指しているという可能性が高いことです。

そして、体臭を発散するのは火=心であり、心の熱と血液の循環によって体臭が出てくるということです。そう考えると心の液は汗なので、血液を材料としてできる汗を介して体臭が発散される現象ともつながってきます。

そして、東洋医学ではよい体臭を発散するにはどうしたらよいと考えていたのか?それは、五臓の中で最も尊い臓である心(「君主の官」との別名もあります)が、その良い特性を発揮することでした。君主とは王や帝であり、有徳であることが求められました。

つまり、よき心をもって、正しく生きていくことで芳しい(かぐわしい)香りが体臭として立ち上ってくると考えました。確かに我欲にまみれ、飲食の節度を失い暴飲暴食して、不規則な生活などで健康でなくなれば体臭も悪くなるはずなので、現代医学的にも納得できる部分があります。また最近の資生堂の研究(クリックで資生堂のホームページに移動)ではストレスにより特殊なにおい物質が発生していることがわかり、これに「ストレス臭」という名前が付けられています。東洋ではストレスがかかるような心の持ちようも戒められているので、この「ストレス臭」もよき心と正しい生き方で解決できると考えられます。

しかし、気功の流派として、「香功(シャンゴン)」という鍛錬により芳しい体臭になるものがあったり、悟りに至ると花の香りが身体から出るようになるという話もありますので、現代医学では説明できない現象も含まれていたのかもしれません。

気を修練する者としては、人工的な香りに頼らず、よき心と正しい生き方、そして気功の技術によって良い香りを出せるようになりたいと思っています。そして、そのようなノウハウを開発して、皆さんにお伝えできる日が来ることを願っています。

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