土はすべてをあいまいにする
五行の土は母なる大地がシンボルですが、母なる大地というのは創造性と同時にすべてを土に還すという、無に帰すという意味を持ちます。
土は雑多であり、濁りであり、動きが鈍くなるような、「重濁」の性質を持ちます。
東洋医学では五行で分類する発想がありますが、実際のこの世界の個々の事象は、五行が複雑に混ざっていて、純粋な五行の性質のものはありません。
鍼灸学校で習う東洋医学概論では、その辺は詳しく説明しませんが、隋の時代にできた『五行大義』というような書物を読むと、五行が混ざるという概念を「五行雑」という言葉で説明しています。
五行の中でも土が混ざると、性質が緩くなります。例えば、春夏秋冬の四季に土が混ざると季節の変わり目になります。
今年は、8月末から9月の始めあたりに、秋雨前線が刺激され、佐賀県などで水害が起こってしまいましたが、それも夏の火の性質に土の性質が混ざったことで、説明ができます。
土は雑多ですので、土が入ることで、いろいろな要素が混ざったような状態になります。文化や価値観が混ざったりするのも、土の性質といえます。
これからの時代は、世界中の文化の交流が進み、雑多になっていく傾向が起こると思いますが、五行的には時代の波が「土」の性質を含んできていると言うことができるのです。
この「雑多」というキーワードは、文化の交流によって文化の純粋性が失われるのとは少し違います。それぞれの文化的特徴は残ったままで、多様な文化が同時に存在するというような形です。よく「インドは文化のるつぼ」というような表現をするのと似ています。
異なった性格の子供の個性を認めながら、包み込む母親の性質が「母なる大地」の土の性質なのです。